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第3号 映画『ミュンヘン』(2005年・米)の感想 |
[視聴日:2006年2月5日(映画館:札幌シネマフロンティア12にて)] |
今回は映画『ミュンヘン』(05年・米)の感想について紹介します。
まず、率直な感想として、いい勉強になりました。
この作品は、1972年のミュンヘン・オリンピック開催中に起きた実際のテロを題材にしており、まず、パレスチナのテロリスト集団「黒い九月」がイスラエルの選手村を襲撃し、イスラエル選手団、計11名が犠牲となってしまいます。これに対し、イスラエル政府は「モサド」と呼ばれる暗殺チームを結成し、「黒い九月」のテロリスト達の暗殺を企て、その模様とその過程で起きる様々な葛藤を描いた内容になっています。また、射殺されるシーンの描写など、かなり残酷に描かれています。
私は過去のオリンピックでこんな事件があったことすら知らなかったので、オリンピックの歴史を感じた作品でもありました。特に犠牲となった11人を、イスラエルのメディアが地元のテレビで放映している時に流れるイスラエル国歌が、この重いテーマに拍車をかけるような感じでした。
また、一番印象に残っているシーンは、アテネでの隠れ家で、PLOの若者アリがモサドのアブナーをイスラエル人と知らずにパレスチナ国家の樹立について語り合うシーンで、アブナーが「本当にオリーブの木が恋しいのか? 何もないあの不毛の土地がほしいのか?」と尋ねると、それに対し、アリはうなずき「国のない悲しみが分かるものか。祖国こそすべて」と答え、それを聞いたアブナーは、彼らの思いと自分らの思いが同じであることに気づき、心が揺れ動き、ついには自分の任務自体に疑問を感じていきます。
つまり、根本は祖国に対する同じ思いであるのだから、報復に報復を繰り返すだけで何の意味もないということを監督のスピルバーグが一番、伝えたい部分ではなかったのかなぁと感じました。
ただ、この作品は今なお続く、パレスチナとイスラエルとの問題にも大きく関わるだけに大きな波紋も呼んでいます。Yahooのニュースによると『テロ犠牲者の遺族は“悲劇を伝える良作”と歓迎する一方、当時のモサド関係者からは“事実と違う”などの批判が続出している』(06年3月4日のWeb版読売新聞より抜粋)などといったことも言われているようです。
面白かった度:★★★★
※★印は5段階です(詳しくはゴールデンロード通信1を参照下さい)
それでは、また次回をお楽しみに!
[記事更新日:2008年10月6日]
※2006年2月24日付け公開していた内容を一部変更しました(2008.10.6)
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