コラムのコーナーです^-^
消え行く老舗映画館
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2010年8月31日、ススキノ唯一の一般映画館であった「札幌東宝公楽」がついに半世紀余りの歴史に幕を下ろした。1955年に東宝の直営館としてオープンして以来、「ドラえもん」や「ゴジラ」などの人気シリーズを上映し、多くの人に親しまれてきたが、ここ数年は2003年に札幌シネマフロンティアができた影響もあり、人の流れが少なくなったという。
今ではほとんど見られなくなった手書きの映画看板を掲げる劇場の一つだっただけに、このような歴史ある映画館が閉館していくのはやはり残念である。
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札幌東宝公楽の外観(2010年8月31日) |
最後の上映終了後の館内(2010年8月31日) |
札幌市内で老舗映画館が閉館するのは2003年の閉館ラッシュ時以来であるが、全国では相変わらず、老舗映画館の閉館が相次いでいる。道内の旭川でも買い物公園唯一の映画館であった「旭川東宝」が8月31日をもって閉館となった。
もはや単館映画館がシネコンの集客力に対抗していくには、徹底的に差別化を図って生き残っていくしかないだろうが、そう簡単ではないことを「閉館」というニュースが物語っているといえる。
もちろん、中には差別化を図って成功している劇場もある。2010年5月27日付けの北海道新聞朝刊に「札幌東宝プラザとディノスシネマズ札幌劇場は、子連れの母親限定の映画鑑賞会を昨年12月から開催。シネコンと一線を画した企画は好評で、7月に3回目の開催を予定している。」とあり、元気な映画館として紹介されている。
ただ、最近はシネコンでもミニシアター系の映画を放映したり、名画の特集をするなど徐々に変わりつつある。その背景には当然、差別化を図って成功している映画館との競争もあるが、シネコン同士の競争も激化しているためでもある。
昨年には、栃木県足利市で2007年にオープンしたばかりの最新のシネコン「足利シネマックス」が、僅か1年2ヶ月で閉館するという衝撃のニュースもあった。シネコンですら閉館する時代に突入しつつある今、老舗映画館の生き残りをかけた戦いは今後もより一層厳しいものになるだろう。
また、ここ数年、「DVD・ブルーレイの登場」「大型化するテレビ」「DVDレンタル料金の低価格化」などが進み、わざわざ映画館に行かなくても手軽に大画面・高画質で見られるようになった。そう考えると果たして今の時代、大人1800円という入場料は適切なのだろうか。もちろん、会員割引などで300円割引になるところがほとんどなので、この価格で見る人はほとんどいないだろうが、諸外国と比較しても高い。ファーストデーやメンズデー・レディースデーでは確かに1000円で見れるが、日にちが限定されてしまう上、かなり混み合う。それならDVDになるまで待って、家でゆっくり見ようという考えも生まれてしまう。映画館側からすると1800円でなければならない“事情”もあるだろうが、結局、閉館に追い込まれてしまっては元も子もないだろう。
話が少しそれてしまったが、「最新のシネコン」と「歴史ある老舗映画館」。どちらも同じ映画館ではあるが、それぞれにそれぞれの魅力があるだけにその内の一つがなくなるというのはある意味、文化が一つ消えていくことと同じではないだろうか。
「さて、今回はどの映画館で見ようかな」
そんなふうに思いながら、映画館を選ぶのも楽しみの一つだった時代が懐かしい。
[記事作成日:2010年9月1日]
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